シャトー・ラトゥール

シャトー・ラトゥール（Château Latour）は、フランス・ボルドーのメドック地区ポイヤック村に位置する、1855年のメドック格付けで第一級（プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ）に認定された5大シャトーの一つです。その歴史、テロワール、醸造技術、そして卓越した品質から、世界中のワイン愛好家に愛される名門シャトーとして知られています。

シャトー・ラトゥールの歴史は古く、14世紀にまで遡ります。1331年に記録が確認されており、17世紀末にセギュール家が所有したことでワイン生産が本格化しました。18世紀にはイギリスでボルドーワインの人気が高まり、ラトゥールのワインは他のワインの4～5倍、時には20倍の価格で取引されるほどの名声を得ました。1855年のパリ万博でのメドック格付けで、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・マルゴー、シャトー・オー・ブリオンとともに第一級に選ばれ、その地位を確固たるものにしました。1993年以降は、フランスの大富豪フランソワ・ピノー率いるアルテミス・グループが所有し、伝統と革新を融合させたワイン造りを行っています。

ラトゥールの名前は、14世紀に建設されたサン・ランベールの塔（La Tour）に由来し、この塔はラベルのシンボルとしても描かれています。現在のシャトー施設は1864年に建てられ、長い歴史の中で品質向上を追求し続けてきたことが、ラトゥールの揺るぎない評価の基盤となっています。

2015年ヴィンテージの特徴

2015年のボルドーは、優れたヴィンテージとして知られています。この年の気候は、ブドウ栽培に理想的な条件を提供しました。春から初夏にかけては温暖で適度な降雨があり、ブドウの生育が順調に進みました。夏は暑く乾燥し、ブドウが十分な糖度とフェノール類を蓄えることができました。秋の収穫期には晴天が続き、ブドウは最適な熟度で収穫されました。この気候条件は、特にカベルネ・ソーヴィニヨンが主体のラトゥールにとって、果実の凝縮感とタンニンのバランスが取れたワインを生み出す絶好の機会となりました。
シャトー・ラトゥールのワイン造りは、伝統と最新技術の融合により、細部までこだわり抜かれています。

ラトゥールのブドウ畑は92ヘクタールで、シャトー周辺の47ヘクタールは「ランクロ（L’Enclos）」と呼ばれる特別な区画です。この区画は、ジロンド川に近く、砂礫と粘土質の土壌が特徴で、ブドウ栽培に最適なテロワールを提供します。2008年から馬による耕作を導入し、2015年からは全畑を有機農法に転換。2018年には第一級シャトーとして初めてエコサートの有機認証を取得しました。ビオディナミ農法も取り入れられ、ブドウの品質向上に努めています。

ブドウは手作業で収穫され、厳格な選果が行われます。樹齢の異なるブドウ樹は別々に管理され、若樹には目印を付けて収穫時期を調整。区画ごとに異なるタンクで醸造することで、テロワールの個性を最大限に引き出します。

ラトゥールはグラヴィティ・システムを採用し、ワインの移動を最小限に抑えながら醸造します。大きさの異なる温度調節可能なタンク（166hlから12hlまで）を使用し、区画ごとの特性を反映。ファーストラベルのシャトー・ラトゥールは100%新樽のフレンチオークで15～18ヶ月熟成され、最初の数ヶ月はガラス製の栓で自然な呼吸を促します。その後、密封してさらに熟成させ、清澄と澱引きを経て瓶詰めされます。

ヴィンテージ2015の評価

2015年のシャトー・ラトゥールは、ダークベリー、カシス、ブラックチェリーなどの黒系果実のアロマに、エスプレッソロースト、鉛筆の削りくず、ポプリ、土やミネラルのニュアンスが加わった複雑な香りが特徴です。
口当たりはビロードのように滑らかで、ミディアムからフルボディの味わいは、しっかりとしたタンニンとフレッシュな酸が調和し、エレガントかつ力強い骨格を持っています。フィニッシュにはミネラル感と土のニュアンスが続き、長期熟成によるさらなる進化が期待されます。

評価では、ロバート・パーカーのワイン・アドヴォケイトで96点、ワイン・スペクテイターで97点を獲得。ワイン・スペクテイターは「濃厚なダークカレントやフィグ、ブラックベリーのコンポートのような風味が中心にあり、しっかりとしたグリップ感と魅力的なパフューム、バイオレットの要素が調和している」と評し、2025年から2045年までが飲み頃としています。

シャトー・ラトゥールは、5大シャトーの中でも特に長期熟成に適したワインとして知られています。2015年ヴィンテージは、20～50年以上の熟成が可能なグレートヴィンテージで、適切な保管条件下で保管することで、複雑で深い味わいがさらに開花します。

ラトゥールは、2012年にプリムール（先物取引）から撤退し、ワインが飲み頃になるまでシャトーで熟成させる戦略を採用しました。この姿勢は、品質への自信と長期的な価値提供へのこだわりを示しています。また、有機農法やビオディナミ農法への移行は、環境への配慮と持続可能なワイン造りを象徴しています。

シャトー・ラトゥール 2015は、卓越したテロワール、厳格な醸造プロセス、そして優れたヴィンテージ条件が融合した、力強くもエレガントなワインです。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とした凝縮感ある果実味と、長期熟成による複雑な進化が期待されるこのワインは、ワイン愛好家にとって垂涎の的です。歴史、品質、革新性を兼ね備えたシャトー・ラトゥール 2015は、特別な機会やコレクションに最適な一本です！