世界的な憧れのブランド、エルメス。その歴史は今からおよそ180年前の1837年、創業者のティエリ・エルメスが高級馬具の製造工房「ティエリ・エルメス」を開業したのが始まりです。場所は、フランスはパリのランパール通り。ティエリー・エルメスの作る馬具は機能性が高く、その上見た目も美しかったことから「エルメスの鞍をつける馬は持ち主よりもお洒落だ」と表現されるほどでした。
ナポレオン3世の時代には皇帝御用達の馬具職人となり、また、万国博覧会で出品した鞍は銀賞を獲得するなど、エルメスの名は最高峰の馬具を取り扱うブランドとして知れ渡るようになりました。このように権威のある人々に認められたことから、最高峰のイメージや高品質、職人の熟練技術による芸術性や希少性といった、現在のエルメスに通じるブランドイメージが醸成されていきます。
開業から約60年ほど経った1903年。順風満帆にみえたエルメスに苦境の時代が訪れます。つまり、自動車の登場です。ガソリンさえ入れておけば快適で便利に走る移動手段が誕生したことで、馬具の需要は徐々に減っていきました。エルメスだけではなく、馬具工房を扱う業者全体が存亡の危機に直面することになります。
そこでエルメスは、馬具づくりの技術を生かし、バッグや財布などの皮や革製品の製造に事業転換しました。その後の大成功は誰もが知るところです。エルメスは「職人技の伝承」「移動・旅行のよろこび 」を掲げ、現在、世界中から支持される超一流ブランドとして君臨しています。